なかった

最寄り駅から家まで数秒早く帰れる近道がある。

駐車場をつっきる、ただそれだけ。

そういえば8月くらいまでそこに家があった。古かったけども立派な家だった。それまで人の出入りもあった。

突然、取り壊されて家の中を見た時もあったように思い出す。きっと立派な人が苦労して建てたであろう家のがわずか1週間ほどで取り壊されていった。どんな思い出があったのか。

夜の駐車場で足を止めてそんなことを考えた。

冬に染められたアスファルトの冷たさと乾いた風しかそこにはなかった。