今日も雪が降った。

皆は厄介そうに外を睨んだ。雲が堪えられずこぼれ落とした結晶は地面に落ちては溶けていった。

しばらくすると晴れているのに雪が降る天気に変わった。伊吹山を超えた瀕死の雲が霧散しながらその生を全うし、砕けていく。

 

もうこれ以上の雪は望めないだろう。だから非の打ち所のない晴天を期待する。

白く染まった伊吹山をこの目にみせてほしい

終わった

僕は新幹線にのっている

新幹線の窓からは冬の青空が広がっていた。

西で雪を降らせた雲は軽くなった身を太陽にあてて、白く輝かせていた。

 

11月末からはじまった忙しない日々は、昨日ひとつの区切りがついた。

滅多に泣かないはずなのに、この約2ヶ月は何度か泣いた。色々なことを教わった。幼すぎてわからないことがほとんどだった。そして、最後の最後に、僕が理解できるようになった年齢になって、あることを教えてもらった。

山は雪を身にまとっていた。

 

一度役目を終えた雲がまた悲しみを蓄えて、決壊し、冷たい何かをこぼし始めるまで

 

なにしろ区切りがついたのだ。

またここからゆっくり考え始めざるを得ない。

 

僕は西へ、雪の中へ突進する。

 

なかった

最寄り駅から家まで数秒早く帰れる近道がある。

駐車場をつっきる、ただそれだけ。

そういえば8月くらいまでそこに家があった。古かったけども立派な家だった。それまで人の出入りもあった。

突然、取り壊されて家の中を見た時もあったように思い出す。きっと立派な人が苦労して建てたであろう家のがわずか1週間ほどで取り壊されていった。どんな思い出があったのか。

夜の駐車場で足を止めてそんなことを考えた。

冬に染められたアスファルトの冷たさと乾いた風しかそこにはなかった。

 

問う

酒や煙草などは心の慰み。

慰まるる心はただ刻まれるのみ。

慰みが心を心として捕らえて離さない。

流した涙はただ、心を捕らえる檻にしかならぬ。

慰みが慰みを呼び、呼んでは呼んで、鎖できつく締め上げる。